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自然妊娠に関する情報 Vol.1

自然妊娠に関する情報 Vol.1

日本生殖医学会認定 生殖医療専門医 井上治先生の記事からの引用です。

今回は自然妊娠、出産に関する報告をご紹介いたします。

Fertility and sterility, 2022-01, Vol.117 (1), p.53-63

妊娠の可能性は、一般的に避妊しない場合、最初の数ヶ月で最も高く、その後徐々に低下します。約80%のカップルは、妊娠を試みてから最初の6か月で妊娠します。1か月あたりの妊娠する可能性は最初の3か月で最大になります。20代後半から30代前半が出産のピークであり、出生率は40歳で約半分に減少します。

出生率は、女性と男性の両方で年齢とともに低下しますが、年齢の影響は女性ではるかに高いです。これは、母体の加齢に伴う異数性と流産のリスクの増加に関係します。男性の精液所見も35歳を過ぎると低下しますが、出産に関しては約50歳までそれほど影響を受けていないようです。

・妊娠しやすい時期

排卵までの6日間が妊娠しやすい期間とよく定義されます。一番妊娠しやすい時期は、排卵日二日前と報告や、排卵日前日が妊娠しやすいという報告もあります。

・性交の間隔

5日以上の禁欲間隔は精子数に悪影響を与える可能性があります。正常な精液の質の男性では、毎日の射精でも精子濃度と運動率が正常なままであることが観察されました。驚くべきことに、乏精子症の男性では、精子濃度と運動率は毎日の射精を行うことで最も高くなる可能性が報告されています。

毎日の性交が利点を与えるかもしれませんが、カップルに不必要なストレスを引き起こすかもしれません。性交が妊娠可能期間に1〜2日ごとに行うときに最も高くなります。

・排卵の推定

黄体期の長さは約14日と推定されます。したがって、排卵日は、28日周期の女性の場合は周期14日目に、30日周期の女性の場合は16日目に推測されます。
妊娠しやすい時期として排卵の推定日から5日間とするなら、月経周期28日の女性では月経周期9〜14日目、月経周期30日の女性では月経周期11〜16日で性交すると妊娠しやすくなると予想でします。

基礎体温や頸管粘液、排卵検査薬も排卵予測に使用できますが、不必要なストレスを誘発する可能性もあり、妊娠しやすい時期に1〜2日ごとの頻繁な性交を推奨しています。

・性交後

報告によりと子宮頸部に沈着した精子は、15分以内に卵管で発見されています。さらに、精子は卵管を通過し、卵管の膨大な部分に集まるのではなく、腹腔内に排出されます。
性交後しばらく仰向けになっていると膣からの精液の漏出が防止されると考えていますが、この考えには科学的根拠がありません。また、特定の性交と児の性別の関連についての有力な科学的根拠もありません。

腟潤滑剤について、市販の水ベースの潤滑剤は、60分以内にin vitroで精子の運動性を60%から100%阻害しますが、菜種油には同様の有害な影響はみられなかったと報告されています。他の報告では、一部の市販の潤滑剤、オリーブオイル、唾液を6.25%の低濃度に希釈すると、精子の運動性と速度に悪影響を及ぼしますが、鉱油にはそのような影響はないということでした。また、ヒドロキシエチルセルロースベースの潤滑剤も、精液所見に明らかな悪影響を及ぼさないということです。一部の潤滑剤はin vitroで精子所見に悪影響を及ぼしますが、妊娠を試みるカップルでの潤滑剤の使用は、不使用と比較して妊娠に影響を与えるほどではないようです。

・ダイエット

非常に痩せた女性や肥満の女性は出生率が低いですが、排卵期の女性の出産に対する通常の食事の変更の影響に関するデータはほとんどありません。シーフードの大量消費による血中水銀レベルの上昇は、不妊症と関連していると報告されています。妊娠しようとしている女性は、神経管欠損のリスクを減らすために、葉酸サプリメント(少なくとも1日400μg)を服用するようにアドバイスされます。

自然妊娠を試みる群を対象とした複数のコホート研究により、食事パターン、主要栄養素、微量栄養素、および出産の可能性との関連が評価されています。ナースヘルススタディIIは、トランス脂肪酸ではなく一価不飽和脂肪酸、動物性タンパク質源ではなく植物タンパク質、低血糖炭水化物、高脂肪乳製品、マルチビタミン、植物やサプリメントからの鉄分などの食事が、排卵機能障害に関連する不妊リスクの低下と関連していることを示しました。

その他の報告では、地中海式食事(野菜、果物、低脂肪乳製品、オリーブオイル、魚、家禽の摂取量が多い)またはオランダ式食事(全粒穀物、一価不飽和脂肪酸、野菜)なども示されています。一般的に健康を改善するための食事療法やライフスタイルの変更が推奨されます。

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