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本日は”体型と精液所見が関係あるのではないか”という報告をご紹介いたします。
2019年1月 Hum Reprod
Association between BMI and semen quality: an observational study of 3966 sperm donors
世界中で7000万人のカップルが不妊または不妊を経験していると推定されており、約40%が男性が関係しているといわれています。2017年に発表された報告によると、1973年から2011年に行われたメタアナリシスにおいて、西洋諸国の男性の精子数(精子濃度または総精子数のいずれかによって測定)が50%以上減少してきていることが指摘されています。根本的な原因は不明ですが、除草剤、農薬および環境汚染物質など精液の質を低下させているという報告があります。
BMIと精液検査結果との関連性の背後にある病態生理学は不明です。過体重や肥満は精子形成に重要なGnRH-FSH / LHパルスに影響を与えることが示されています。これはライディッヒやセルトリ細胞の機能を弱め、性ホルモンの放出や成熟精子の産生を妨げる可能性があると報告されています。対照的に、低体重と精液検査結果との関係は低栄養が男性ホルモンに悪影響を及ぼすといわれていますので、低栄養が関連しているのではないかといわれています。栄養不良はテストステロンレベルの低下と関連しており、成熟に必要なシグナルを発達中の精子から妨げ、精子形成低下に関連している可能性があります。
BMIと精液所見の関係性があるかについて検討した報告は様々ありますが結論はでていません。そこで、この報告は健康な男性を対象として体型と精液所見の関係を検討しています。
<方法>
対象:22〜46歳の精子提供者、3966人の中国人男性から行なった29,949件の精液検査
基準:2〜7日間の禁酒期間
(i)液化時間が60分未満、精子濃度が60×106 /ml以上、進行性運動性が32%以上、正常な形態学的パーセント以上15%
(ii)解凍後の精液は≧40%の運動性、≧12×106の総運動性精子数、および≧60%の凍結融解生存率。
BMI = 体重[kg]/ 身長[m]2とし、世界保健機関(WHO)のガイドラインにそって、低体重(<18.5 kg/m2)、普通体重(18.5〜24.9 kg/m2)、過体重(25〜29.9 kg/m2)または肥満(≥30 kg/m2)に分類。
精液基準を満たした男性の精液所見と低体重、普通体重、過体重、肥満の4群を比較検討しています。
<結果>
普通体重と比較して、低体重群は、精子濃度、総精子数および総運動性精子数が有意に低いことを示した(P <0.05)。
一方、精液量と総精子数は過体重で有意に低かった(P <0.05)。
BMIでの分類では総運動率または前進運動率に関して有意差を認めませんでした。
用量反応関係を調べると
正常体重の中央値BMI(21.6 kg/m2)より低い場合、精液量、精子濃度、総精子数、総運動精子数は、BMIの減少と共に単調に減少しているようでした。
BMIが21.6~30 kg/m2では、精液量、総精子数および総運動性精子数は、BMIの増加と逆相関していました。 BMIと精子運動率の間に有意な関係は観察されませんでした。
精液所見がある程度問題ない方を対象とし29,949件の精液検査を受けた3966人におけるBMIと精液検査との関連を調べたところ、
低体重では精子濃度、総精子数および総運動性精子数と反比例の関係を示し、過体重は精液量、総精子数および総運動性精子数の減少と関連していました。
しかし、この集団における肥満と精液検査結果に有意な関連は観察されませんでした。
この報告では正常な体重を維持することが精液所見を保つためには重要であるを訴えていました。