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10回目の妊婦健診は妊娠34週~35週で行われます。
この週数の妊婦健診では、B群溶血性連鎖球菌(以下、GBSと略します)の検査が行われます。
今回のブログではGBSについて解説していきたいと思います。
溶連菌とは、正式には溶血性連鎖球菌と呼ばれる細菌で、α溶血とβ溶血を呈する2種類があります。
β溶血を呈するものでヒトに病原性を有するものは、A群、B群、C群、G群などがあり、溶連菌感染症の90%以上がA群によるものです。
したがって、一般的にはA群溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌)による感染症を溶連菌感染症として理解されているといってもよいでしょう。
主に“のど”に感染して、咽頭炎や扁桃炎、それに小さく紅い発疹を伴う場合があります。
いわゆる小児科をのどの痛みで受診して、言われる溶連菌感染がこれに当たります。
最近、報道などで良く耳にする劇症型溶連菌感染症の起炎菌もA群溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌)です。
稀な病気ですが、症状は発熱、手足の痛みから始まり、菌が全身に広がります。発症から多臓器不全に至るまでの経過が急激ですので注意が必要です。
今回のテーマのB群溶血性連鎖球菌(GBS)は、それらとは別の疾患となります。
この菌は妊婦さんの10~30%が腟や腸内に持っている菌です。
大人がこの細菌をもっていることで問題となることはほとんどありません。
しかし、赤ちゃんがお産のときに産道でGBSに感染すると、重症の肺炎や敗血症になるおそれがあります。
何も治療をしないと、約半数の赤ちゃんにGBSが感染し、感染した赤ちゃんの約1%に肺炎や敗血症を発症してします。
このように赤ちゃんに症状が出る可能性はさほど高くはありませんが、もし発症すると急激に状態が悪くなり死亡してしまうこともあります。
GBS感染症は発症時期により分けられます。
・早発型:日齢0~6日
産道感染が主で敗血症や肺炎が多い傾向で、発症率は1%前後と少ないものの予後は著しく悪いです。
早発型GBS感染症を発症した新生児の約20%に死亡または後遺症を起こすことから感染予防対策が重要となります。
・遅発型:日齢7~90日
水平感染(感染源(人や物)から周囲に広がるもの)が多く、髄膜炎の発症率が高いです。
水平感染を防ぐためには保菌者の手指消毒などの感染対策が重要です。
発症症例の割合は日本国内における1998年から2003年の6年間のアンケート調査によると、GBS感染症458例中、早発型は84%、遅発型は13%と早発型が多く、63%の287例が日齢0に発症したと報告されています。
また、分娩時のGBS感染予防処置により新生児GBS感染症を1/5に減らすことができたと報告されています。
このように、新生児における早発型GBS感染症は適切な感染対策を実施することにより発生率を減少させることが可能な感染症と考えられます。
10回目の妊婦健診の際に内診台で、膣内・肛門周囲から綿棒で採取します。
分娩5週間以内での検査が好ましいので、当院では可能な限り妊娠35週に妊婦健診を行って、その際に検査を行っています。
熊本県での妊婦健診では、妊娠初期にBVスコアの項目があるため、1回目の妊婦健診で膣培養検査が行われます。
妊娠期間中に膣培養検査にて1回でもGBSが指摘された場合には、GBS保菌者をして扱うため、後述する分娩時のGBS感染予防処置を行います。
GBS保菌者と診断された妊婦さんが破水で入院した時、もしくは、陣痛で入院した時から抗菌薬の投与を開始します。
通常は、アンピシリン(ペニシリン系)の静脈投与を4時間毎に行います。
しかし、ペニシリンアレルギーがある場合には、アンピシリンの投与が行えないため、セファゾリンもしくはクリンダマイシンといった他の抗菌薬を投与します。
抗菌薬に対するアレルギー歴がとても重要となりますので、初診時の問診票に正確に記載していただく必要があります。
今回は、GBS感染症について記載しました。
GBSは日常生活への影響は少ないですが、新生児GBS感染症だけはかなり注意が必要であることがお分かりいただけたと思います。
当院では、最新の”産婦人科診療ガイドライン”に準じた治療体制で感染予防に努めております。