ブログ
Blog
Blog
7回目の妊婦健診は妊娠28週~29週で行われます。
7回目の妊婦健診では、2回目の胎児スクリーニング検査を行います。
内容としては、1回目のスクリーニング検査と同様です。
1回目のスクリーニング検査内容は、4回目の妊婦健診について(胎児スクリーニング検査を中心に)をご覧ください。
妊娠週数が進むことで所見が明らかになる疾患もありますので、全身のスクリーニングを再度行います。
また、妊娠20週前後に比べると心臓も大きくなりますので、心臓の構造についてもより詳しく見ていきます。さらに、妊娠週数が進むことで所見が明らかになる疾患もありますので、そのあたりも注意して観察していきます。
では、先天性心疾患について解説していきます。
心臓の奇形は先天奇形の中で最も頻度が高く、約1%(生まれてきた赤ちゃんの100人に1人)といわれています。
生後1年以内に治療が必要となる重症な心奇形はその1/3-1/2で、約0.3~0.5%(生まれてきた赤ちゃんの200人から300人に1人)となります。
公益財団法人 日本心臓財団のwebページより抜粋
先天性心疾患には、経過観察のみの症状の軽いものや自然治癒するものから、すぐに手術や特別な処置が必要となる重症なものまで、さまざまな病態があります。
先天性心疾患でもっともの頻度が高い疾患は、心室中隔欠損症(VSD)で、先天性心疾患の約6割を占めます。
心室中隔とは、心臓の左心室と右心室を仕切る壁に穴が開いているものです。
公益財団法人 日本心臓財団のwebページより抜粋
心室中隔欠損の穴が大きい場合には、胎児スクリーニング検査で同定することができますが、穴の大きさが小さい場合には胎児診断するのはなかなか困難です。
しかし、穴が小さい場合には、生まれた後に特別な処置を必要とすることは少なく、聴診での心雑音として指摘されることが多いです。その場合には退院後の落ち着いた時期に小児循環器科の先生に紹介して診ていただいています。
生まれた後に特別な処置を必要とするような先天性心疾患が出生前診断が必要な先天性心疾患となります。
そのような先天性心疾患は、動脈管依存性先天性心疾患(肺動脈閉鎖、高度な肺動脈狭窄、重症ファロー四徴症、大動脈縮窄・離断、左心低形成症候群、大血管転位症など)が多いです。
イラストはMATERNITY THERAPIST SCHOOLホームページより抜粋
動脈管は肺動脈と大動脈をバイパスする脈管であり胎児循環には必要な血管です。
出生後に啼泣することで血中酸素濃度が上昇し、生後10~15時間以内に動脈管の閉鎖が始まります。
動脈管依存性先天性心疾患は動脈管が開存していることで循環が維持されているので胎内では問題ありませんが、出生後に動脈管が閉鎖してしまうと全身状態が急変してしまいます。
したがって、このような動脈管依存性先天性心疾患は胎内診断が重要となり、疑われた場合には熊本市民病院などの総合周産期母子医療センターを紹介して精密検査を受けていただいています。
7回目の妊婦健診について、先天性心疾患を中心に書いてみました。
先天性心疾患の頻度が約1%(生まれてきた赤ちゃんの100人に1人)というのは、思っていたよりも多いと感じられるでしょう。
しかし、治療が必要となる重症な心奇形は約0.3~0.5%(生まれてきた赤ちゃんの200人から300人に1人)であり、そこまでは多くはありませんが、分娩施設で1年に1回は出会うような確率ではあります。したがって、しっかり胎児スクリーニング検査を行うことで、十分な医療を受けられる高次施設に的確な時期に紹介をすることが大事と思います。
当院では妊娠20週と妊娠28週で胎児スクリーニング検査を行い、もし、胎児異常が疑われる場合には適切な施設に紹介を行うようにしております。