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9回目の妊婦健診について(妊娠高血圧症候群を中心に)

9回目の妊婦健診について(妊娠高血圧症候群を中心に)

9回目の妊婦健診は妊娠32週~33週で行われます。

この週数の妊婦健診は一般的な妊婦健診が行われることが多いのですが、今回のブログでは妊娠高血圧症候群について解説していきたいと思います。

 

妊娠高血圧症候群って何?

妊娠高血圧症候群とは、妊娠中に収縮期血圧が140mmHg以上、あるいは拡張期血圧が90mmHg以上と高血圧があることを指します。

この病気は妊婦さんの5~10%におこると言われており、比較的多い妊娠合併症の一つです。

はっきりとした原因は解明されていませんが、妊娠初期に胎盤がうまく作られないことが原因となっていると考えられています。

妊娠すると胎盤にはお母さんからの血液が豊富に流れるようになりますが、妊娠高血圧症候群では胎盤への血液が流れにくくなることが指摘されています。

それに伴って、お母さんの体は赤ちゃんにできるだけ血液を送ろうとします。そうすると、胎盤で血圧を上げる様々な物質が作られ、それによって血圧が上がってしまうと考えられています。

 

どのような妊婦さんが妊娠高血圧症候群になりやすいの?

妊娠高血圧症候群のリスク因子として挙げられるものとして

・年齢(40歳以上):40歳未満の方に比べて1.7倍

  ほど妊娠高血圧症候群になりやすくなります。

・肥満

   BMI:25以上で正常体重の方に比べ約2倍

   BMI:30以上で正常体重の方に比べ約3倍

  ほど妊娠高血圧症候群になりやすくなります。

・遺伝的要因

   家族に高血圧または糖尿病の方がいる場合には、それぞれ約2倍

   お母さんやご姉妹が妊娠高血圧腎症になったことがある場合には約3倍

  ほど妊娠高血圧症候群になりやすくなります。

・合併症を持っている場合

   高血圧症合併妊娠:11倍

   糖尿病合併妊娠:3倍

   腎臓疾患合併妊娠:7倍

   全身性エリテマトーデスなどの自己免疫性疾患:7倍

   抗リン脂質抗体症候群:10倍

  ほど妊娠高血圧症候群になりやすくなります。

 

妊娠高血圧症候群の症状は?

自覚するような症状は比較的少なく、妊婦健診などで高血圧と言われて診断されることが多いです。

時には、頭痛、重度のむくみ、急激な体重増加、目の前がチカチカするなどの症状が出てくる場合もあります。

妊娠高血圧症候群が重症になると、

お母さんに関しては、

  (1)肝臓機能障害や腎臓機能障害

  (2)子癇(しかん)と呼ばれるけいれん発作

  (3)脳出血などの脳血管障害

  (4)常位胎盤早期剥離

などを起こすことがあります。

赤ちゃんに関しては、

  (1)赤ちゃんの発育が悪くなる胎児発育不全

  (2)赤ちゃんの状態が悪くなる胎児機能不全

  (3)その結果として赤ちゃんが亡くなってしまう子宮内胎児死亡などを起こすことがあります。

このようにお母さん、赤ちゃんにとって非常に危険な状態になることもある病気のため、妊娠高血圧症候群と診断された場合には慎重な管理が必要となります。

 

妊娠高血圧症候群の分類について

妊娠高血圧症候群は4つの病型に分かれています。

1.妊娠高血圧腎症(preeclampsia:PE)

妊娠20週以降に初めて高血圧となった妊婦さんで、高血圧の他に検査の異常や症状がある場合にこの病型と診断されます。

検査の異常としてはタンパク尿、腎臓や肝臓の機能の異常、血小板の減少、血液を固める成分の異常などがあります。

また、高血圧以外の症状には、原因のわからない上腹部の痛みや、頭痛、目が見えにくくなるなどの症状があります。

赤ちゃんの発育が悪く推定体重が小さかったり、超音波検査で子宮に入っていく血液の流れが良くなかったりした場合もこの病型となります。

2.妊娠高血圧(gestational hypertension:GH)

妊娠20週以降に初めて高血圧となった妊婦さんで、最後まで高血圧以外の症状や検査の異常を示さないものです。

3.加重型妊娠高血圧腎症(superimposed preeclampsia:SPE)

妊娠前から、または妊娠20週となる前から高血圧だった妊婦さんが、妊娠20週以降に妊娠高血圧腎症で見られたような症状が出たり検査に異常が出たりした場合、または元々蛋白尿があるような腎臓の病気を持っていた妊婦さんが妊娠20週以降に高血圧となってしまったような場合などがこの病型分類となります。

4.高血圧合併妊娠(chronic hypertension:CH)

妊娠前から、または妊娠20週となる前から高血圧だった妊婦さんで、最後まで高血圧以外の検査異常や症状を示さない場合にこの病型分類となります。

 

また、妊娠高血圧症候群はいつ発症したかによっても分類されています。 

早発型(EO):妊娠34週未満で妊娠高血圧症候群と診断された場合

遅発型(LO):妊娠34週以降で妊娠高血圧症候群と診断された場合

 

妊娠高血圧症候群の治療法は?

残念ながら妊娠高血圧症候群には根本的な治療法はありません。

安静や塩分制限で経過を観察して、それでも高血圧が続くようなら降圧剤で血圧のコントロールを行い、赤ちゃんの状態や発育を観察していくというような管理をしていきます。

子癇前症を疑うような、ひどい頭痛や目がチカチカするような場合、血圧が160/110mmHg以上の場合には、硫酸マグネシウムという子癇発作(けいれん発作)を予防する点滴を行うこともあります。

妊娠高血圧症候群(特に妊娠高血圧腎症)と診断された場合には、妊娠を継続していくことがお母さんの身体の大きな負担になることが知られています。

母体と胎児のリスクのバランスを十分に考えて、慎重に治療方針を決定されます。

分娩後も1週間程度は病状が安定しないことが知られていますので、血圧、心拍数、尿量、体重などのチェックのほか、血液検査や尿検査なども行い、身体の状態が改善していくことを確認します血圧が高い場合には、140/90mmHg以上未満となるよう降圧剤を使うこともあります。

退院後も血圧が正常に戻り、血液検査、尿検査の異常が見られなくなるまで外来で慎重に経過をみて行くことが大切です。

 

妊娠高血圧症候群になった場合の将来的な影響について

妊娠高血圧症候群は妊娠中だけの病気というわけではなく、将来的にも注意が必要な病気と言われています。

妊娠高血圧症候群にかかった女性は、将来年齢を重ねてから、生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症、慢性腎臓病)やそれに引き続く脳や心臓、の病気になりやすいことがわかっているからです。また最近、妊娠高血圧症候群にかかった女性は、将来認知症になる可能性も高くなることがわかってきました。

生活習慣病の予防には、お産の後も適切な体重(BMI 22前後)を維持すること、適度な運動を行うこと、カロリーや塩分の取りすぎを控え禁煙すること…など、健康的な生活習慣を維持することがとても大切です。ご自身で体重管理を行うことや、家庭で血圧測定をすることも有用です。

ご家庭での血圧測定は朝と晩にできるだけ安静にした状態でそれぞれ2回ずつ行い、どちらか一方でも平均値が135/85mmHg以上の場合に高血圧と診断されます。

ご自身で気付く症状が他にないこともあり軽視しがちですが、習慣的にに血圧を測ることで早めに高血圧に気付くことができますので、自宅血圧測定はおすすめですよ。

また、妊娠高血圧症候群と診断された方は、次の妊娠でも妊娠高血圧症候群になるリスクが高くなります。

前の妊娠で妊娠高血圧腎症と診断された場合や、前の妊娠で妊娠高血圧症候群と診断され、35歳(特に40歳以上)の高齢妊娠の場合、肥満や元々高血圧がある場合、糖尿病や腎臓病などを合併している場合は、再発のリスクが高いと考えられ、次の妊娠で低用量のアスピリンを妊娠初期より内服することが勧められています。

 

まとめ

かなり恐ろしい内容となってしまいましたが、妊娠高血圧症候群は本当に怖い妊娠関連疾患です。

ご自身のリスクを正しく知ることも大切と思います。

 

上記内容は日本妊娠高血圧学会のホームページより引用しております。

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