北くまもと井上産婦人科医院

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新型コロナ感染症後の精液所見

新型コロナ感染症後の精液所見

日本生殖医学会認定 生殖医療専門医の渋谷バースクリニック院長 井上治 先生の記事からの引用です。

新型コロナウイルス感染症は、今までのコロナウイルス株と比較して毒性が低いが、強い感染性を示し、女性よりも男性の方が致死率が高いとジョンズホプキンス大学が報告しています。
SARS-CoV-2ウイルスが性腺に局在する可能性が報告されており、活動性のあるCOVID-19感染における性腺機能低下症の発症を示し、ライディッヒ細胞機能の障害をもたらしますが、この障害が精巣におけるウイルスの局在に関連しているかどうかは不明です。性腺機能低下症によるテストステロン変化やCOVID-19による炎症が精液所見に影響を与える可能性があります。

この研究では、唾液、尿、精液にSARS-CoV-2が存在するか、精液所見、精液中IL-8(炎症マーカー)を調査しています。

Human Reproduction, Vol.36, No.6, pp. 1520–1529, 2021

SARS-CoV2感染(SARS-CoV2 RNAの2回連続した陰性)からの回復した18〜65歳の43人の男性で、4つのサンプル(唾液、射精前の尿、マスターベーションで得られた精子、射精後の尿)のSARS-CoV-2ウイルスの存在を検査しています。40人(93%)は、SARS-CoV-2RNAが陰性でした。 3人の患者(7%)がいずれかのサンプルで陽性となっていました。

精液検査は、8人の患者(18.6%)が無精子症であり、3人が200万/ mL(7.0%)未満の乏精子症でありました。全体として、患者の25.6%は乏精子症でした。 無精子症の発生は、病気の重症度と非常に関連がありました。集中治療室に入院した5人の患者のうち4人、入院した26人のうち3人、入院していない12人のうち1人にみられました( P <0.001)。 

単変量解析では、年齢、入院歴、およびIL-8はすべて無精子症に関連する項目でした。 多変量解析では、入院(入院していないvs.入院vs.集中治療室)が乏精子症・無精子症の主な要因でした(P = 0.039)。
この研究は、COVID-19からの回復しても、若くて性的に活発な男性が乏精子症・無精子症を発症する重大なリスクがあることを示していました。

しかし、様々な報告がありますので、必ずしも新型コロナウイルスに感染したら、乏精子症・無精子症になるわけではありません。年月が経ては改善する可能性もあります。さらなる報告を待ちたいと思います。

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