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日本生殖医学会認定 生殖医療専門医の 井上治 先生の記事からの引用です。
今回37,553 人の合計 92,471 回の人工授精を調査し、洗浄後の総運動精子数が妊娠率に影響するのではないかという報告をご紹介します。
Fertil Steril. 2021 Jun;115(6):1454-1460.
以前より洗浄後の総運動精子数が人工授精の妊娠率に関係するという報告はあり、推奨される治療の下限は 300万 から 1000万 の運動精子と言われています。
この報告は、洗浄後の総運動精子数が900万以上で妊娠率が高く、その後総運動精子数が減少するにつれ妊娠率が低下していくことがわかりました。
一般化推定方程式という調整後の統計では、26,995 人の 62,758 回を対象とし、
妊娠率は、人工授精1回目から6回目までは 15.5% ~ 17.5%と変わりはありませんでした。
・年齢によるサイクルあたりの臨床妊娠は11.9%(>40歳)、13.4%(38−40歳)、15.0%(35−37歳)、18.5%(<35歳)と35歳以上は1人あたりの妊娠率が統計的に有意に低い結果でした。
・BMI による周期あたりの臨床妊娠は 16.2% (BMI > 30) 、15.9%(BMI 25.1−30)、16.4%(BMI 18.5−25) 16.7% (BMI < 18.5) であり、BMI 18.5 以上のすべてのサブグループは、周期あたりの臨床妊娠が統計的に有意に低い結果でした。
・刺激プロトコールにおいては、FSH のみでの臨床妊娠率19.0% と比較して、CC または FSH + CC の臨床妊娠率は 16% (P <.001) および 15.2% ( P <.001)と有意に低い結果でした。
洗浄後総運動精子(×100万) サイクルあたりの臨床妊娠率
<0.25 4.18%
0.25–0.49 4.11%
0.50–0.99 3.67%
1.00–1.99 7.45%
2.00–3.99 10.13%
4.00–4.99 11.63%
5.00–5.99 12.87%
6.00–6.99 13.93%
7.00–8.99 14.33%
>9 16.70%
まとめ
洗浄後の総運動精子数が900万以上で妊娠率が高く、その後総運動精子数が減少するにつれ妊娠率が低下していくようです。
総運動精子数 25万でも4%ほど妊娠することが示されています。精子所見が悪くても相談しキャンセルしなくても良いかもしれません。