北くまもと井上産婦人科医院

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新型コロナウイルスの妊娠への影響について


新型コロナウイルスの妊娠への影響について

熊本でも新型コロナウイルスの感染が確認されました。

正しい情報かどうか分からないことや対応策が分からないことが皆様の不安の原因となっていると思われますので、日本産婦人科感染症学会の情報をお知らせしたいと思います。

新しい情報が発表されましたので更新します。(2月28日)

http://jsidog.kenkyuukai.jp/images/sys/information/20200227153639-BFC8009DD4854CEC734AE424C9925DA97D35B5BDC8E264BF7FD5676C3032E9C6.pdf

要点

1.市中感染が広まりつつありますので、特に妊婦の⽅は密室での集会など不要な外出は控えてください.⼿洗いを徹底してください.

2.家庭内に感染者や疑いのある⽅がおられる場合は別室に過ごすなど接触を避けてください。タオルや⾷器の共⽤は避けてください。

3.厚労省の通達により、受診を希望される⽅はまず帰国者・接触者相談センター(お住まいの保健所)に相談してください。必要に応じて、指⽰された医療機関を受診してください。複数の医療機関を受診することは控えてださい。

4.37.5 度以上の発熱や倦怠感が 2 ⽇以上続く場合は帰国者・接触者相談センター(お住まいの保健所)にご相談ください。

5.PCR 検査が現時点で唯⼀の検査法ですが、偽陰性(感染しているのに検出できない)のことがありますので、⼼配だからとか念のためという理由で受けることはできません。また主治医や帰国者・接触者相談センター(お住まいの保健所)にはいつごろからどのような症状があるかなど正確に情報を伝えてください。

6.軽症でも新型コロナウイルス感染の可能性のある時は妊婦健診受診を控えてください。また,ご家族に患者さんがおられる場合も妊婦健診の受診⽇を 1-2 週ずらすことは可能ですので主治医に電話でご相談ください。但し、それまでの妊娠経過が正常の場合に限ります。不正出⾎やお腹の痛み、破⽔感など産科的症状のある場合は受診が必要ですが、かかりつけの産婦⼈科で対応できないことがありますので、帰国者・接触者相談センター(お住まいの保健所)にご相談ください。

7.妊娠末期(分娩前)に新型コロナウイルスに感染した妊婦さんは,指定医療機関で分娩を⾏うことになります。新⽣児とは双⽅がウイルス陰性となるまで⾯会できずまた授乳もできません。

8.主治医の判断により感染の有無にかかわらず、ご家族の⽴会分娩や⾯会は感染予防のため極⼒お控えいただくことになります。

※お住まいの保健所については以下リンクを参照ください。

https://www.pref.kumamoto.jp/kiji_30386.html

 

新型コロナウイルスとは?

2019 年12 ⽉30 ⽇に中国保健機関が公表した湖北省の武漢の「原因不明の肺炎」は、翌2020 年1 ⽉7 ⽇には原因が新種のコロナウイルス (2019-nCoV)と特定され、遺伝⼦も同定されました。

WHO は2 ⽉11 ⽇に本ウイルスによって引き起こされる疾患名をCOVID-19、国際ウイルス命名委員会はウイルス名をSARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)と決定しました。

当初は動物からヒトへの感染のみと考えられていましたが、武漢市内でヒトーヒト感染が報告され、2 ⽉18 ⽇の時点における中国政府の公式発表では、同国内患者は7 万例を超え、死亡者も1700 例を超えています(致死率約2%)。

患者数は依然増加していますが、武漢では増加率は鈍化してきており、今後数週間以内に減少してゆく可能性があります。ただ、中国全⼟からアジア諸国や欧⽶にも広がっており楽観はできません。

1 ⽉31 ⽇、WHO は国際的な公衆衛⽣上の緊急事態を宣⾔し、わが国でも⾶⾏機乗り⼊れ禁⽌、中国への旅⾏⾃粛などの⽅針が打ち出されています。さらに2 ⽉13 ⽇以降には、旅⾏や感染者との接触が明らかでない感染者が報告されるようになり、⽔際対策による感染防御が有効な時期は過ぎ、前流⾏期(プレパンデミック期)に⼊ったと考えられます。

コロナウイルスとは、脂質の膜であるエンベロープに覆われた⼀本鎖(+)RNA ウイルスで、普通感冒を起こす4 種類のウイルスHCoV-229E、HCoV-OC43,HCoV-NL63、HCoV-HKU1 に加えて、2003 年に流⾏した重症急性呼吸器症候群 (Severe Acute Respiratory Syndrome, SARS) の病原体SARS-CoV, 2012 年に流⾏した中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory Syndrome, MERS )のMERS-CoV の6 種類が知られています。

今回のウイルスはこれら過去に報告されたウイルスとは遺伝⼦構造が異なっておりコウモリやヘビなどの動物からヒトへの感染性を獲得し、さらにヒトからヒトへの感染性を獲得したものと考えられます。

いずれのウイルスも有効なワクチンや抗ウイルス薬はありません。エイズの薬(プロテアーゼ阻害薬)が有効である可能性がありますが現在研究中であり⼀般に使える状態ではありません。

 

妊産婦さんへのアドバイス

2 ⽉12 ⽇付のLancet の報告では、武漢市内で妊娠後期にCOVID-19 に罹患した妊婦9 例の解析で経過や重症度は⾮妊婦と変わらず、⼦宮内感染は⾒られなかったとしています1)。

しかし、⼀般的に、妊婦さんの肺炎は横隔膜が持ち上がるために換気が抑制され、またうっ⾎しやすいことから重症化する可能性があります。

妊婦さんは⼈混みを避ける,こまめに⼿洗いするなどの注意が必要です。⼈込みに出る場合は⾶沫感染を防ぐために可能であればマスクをかけることが望ましいのですが、マスクの有効性は確認されていません。

糞便中にもウイルスが排出されるという報告がありますので、トイレに⼊った後や⾷事の前には必ず⽯鹸で⼿を洗ってください。

今後流⾏が拡⼤するようであれば、公共の場所でATM などのタッチパネルに触れた後や、電⾞の吊⾰、⼿すりなどに触れた後も⼿洗いやアルコール消毒を⼼掛ける必要があります。

また、医療機関には、他の妊婦さんや⾼齢者,免疫抑制状態や合併症のある患者さんも来院されます。

感染を広げないため新型コロナウイルス感染症で受診を希望される⽅は帰国者・接触者相談センター(お住まいの保健所)から受診を勧められた医療機関を受診してください。

複数の医療機関を受診することはお控えください。

1 ) Huijun Chen, Juanjuan Guo, Chen Wang, Fan Luo, Xuechen Yu, Wei Zhang, Jiafu Li, Dongchi Zhao, Dan Xu, Qing Gong, Jing Liao, Huixia Yang, Wei Hou, Yuanzhen Zhang. Clinical characteristics and intrauterine vertical transmission potential of COVID-19 infection in nine pregnant women: a retrospective review of medical records. The Lancet

身近にできる予防

繰り返しになりますが外出後や⾷事前などこまめに流⽔と⽯鹸で⼿洗いをしてください。このウイルスにはアルコールなどの消毒薬(アルコールスプレーやアルコールジェルなど)が有効です。発熱や咳などの症状がある⼈との不必要な接触は避けましょう。

薬局や薬店(ドラッグストア)などで購⼊できるマスク(サージカルマスク)は感染予防の有効性は確認されていません。マスクをすることで、⼿指を不⽤意に⼝や⿐にもっていかないという効果があります。しかし、空気中のウイルス粒⼦は花粉や細菌に⽐べてはるかに⼩さく、またマスクの周辺から⼊り込むことがありますので過信は禁物です。マスクをかけていても⿐を出したり、⼝のまわりを開けたりすると何の意味もありません。

マスクは使い捨てで1⽇に数回取り換えてください。市販のマスクが⼊⼿できない場合はガーゼ等の⼿作りマスクでも構いません。いずれにしてもマスクを外す時には、マスクの紐をもって着脱し、⼿を汚染しないようにしてください。ただし、WHO は⼀般の⽅がマスクを着⽤することの効果はほとんどないとしていますので気休め程度と考えてください。

うがいや⿐うがい、⼝腔洗浄には予防効果は認められていません。

⾃然宿主動物はまだ不明ですので野⽣動物との接触は避け、⾁や卵は良く加熱してください。

家庭⽤の空気清浄機やニンニク、ゴマ油、ラベンダーなど特定の⾷べ物やサプリメントによる予防は有効性が確認されていません。

現時点では予防接種はありません。

家庭内に感染あるいは疑いのかたがおられる場合は極⼒接触を避けてください。

 

新型コロナウイルス感染が⼼配なときは?

新型コロナウイルス感染が⼼配なときは厚⽣労働省の通達により受診を希望される⽅は、まず帰国者・接触者相談センターに相談してください。必要に応じて、指⽰された医療機関を受診してください。複数の医療機関を受診することはお控えください。

厚⽣労働省では、倦怠感や37.5 度以上の熱発が4 ⽇以上続く⽅を受診対象としていますが、妊婦さんの場合胎児に対するリスクを考慮して2 ⽇でも受診を検討するようにとしています。

2020 年2 ⽉18 ⽇の時点で、各地で感染例の報告が相次ぎ、⽇本国内でも⼆次感染、三次感染が発⽣している可能性があります。

中国の報告では本疾患の82%は軽症ですみますが、18%が重症化し、2%が死亡する可能性があるとされています。

本疾患における臨床的特徴の⼀つは、発熱や倦怠感などの症状が1 週間近く続くこととされていますが、全く無症状の⽅(不顕性感染)や,いきなり肺炎による呼吸困難で受診する⽅もおられます。新型コロナウイルス感染症とそれ以外の感染症を臨床症状やレントゲン検査だけでは鑑別区別することはできません。新型コロナウイルス感染を確定するには、医療機関でPCR というウイルス遺伝⼦を検出する⽅法による診断を受けることが必要です。しかしインフルエンザのようにその場では結果が出ず、また感染症診療に対応できない病院・医院もありますので、帰国者・接触者相談センターに電話でご相談ください。

さらに、検査で陰性であっても、後で陽性になることがあります。無症状であるが念のためとか⼼配だからという理由による検査は限られた検査能⼒を圧迫するので受けるべきではありません。仮に新型コロナウイルス感染であっても、現時点での死亡率はSARS やMERS よりもはるかに低く、患者さんが多い中国でも、現時点では妊婦さんの死亡報告はありませんので過剰な⼼配は不要です。しかし、⼀般的に妊婦さんの肺炎はご本⼈が重症化するのみならず、胎児に影響する恐れもありますので、⺟児の健康を守るためには適切な治療と対応が必要です。

感冒様症状があるときは市販の感冒薬や漢⽅薬などを服⽤しても構いませんが、医師や薬剤師に相談してください。

抗菌薬(抗⽣物質)は無効であるばかりか耐性菌を誘導する可能性がありますので、万⼀新型コロナウイルスに感染した時に混合感染による細菌性肺炎の治療が上⼿くできなくなる可能性があります。⾃⼰判断で服⽤するのは避けてください。

 

情報の収集について

感染症流⾏時には様々なデマが発⽣します。特にTwitter などのSNS により不確かな情報が拡散しがちですが、政府や国際機関、感染症を専⾨とする学会のホームページなど信頼できる情報をもとに⾏動してください。

 

 

1. 厚⽣労働省:新型コロナウイルスに関するQ&A (英語、中国語、韓国語対応あり)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html

2. 国⽴感染症研究所:コロナウイルスとは 

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/9303-coronavirus.html

3. 国⽴感染症研究所:感染症疫学センター

https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc.html

4. CDC(英語:English)

https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-nCoV/guidance-hcp.html

5. ⽇本感染症学会:新型コロナウイルス感染症

http://www.kansensho.or.jp/modules/topics/index.php?content_id=31

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