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2019年1月7日~13日の熊本県内のインフルエンザの患者報告数は4,703名となり、県内のすべての地域で警報レベルとなっています。実際に高熱を訴えて当院を受診され、インフルエンザ検査で陽性になる妊婦さん達が増えている印象を受けます。
インフルエンザウイルスは、患者さんの鼻粘膜で大量に増殖して、咳やくしゃみなどからの飛沫を介して経気道的に感染します。また、鼻水や唾液が手指について、そこからの接触感染もあります。
潜伏期間は通常2~3日とされ、発症直前から発症後3~7日まではウイルスを気道から排出するため、周囲の人にインフルエンザをうつす可能性があります。
症状は、皆様がご存じのとおり、突然の38度以上の発熱、関節痛、筋肉痛、咽頭痛、鼻汁などです。ただし、典型的な症状が出ないこともあるようです。
妊婦さんは胎児を受け入れるために免疫系の活動性が低下しているため、妊娠していない女性に比べて易感染性な状態になっています。その影響で妊婦さんのインフルエンザは重症化しやすく、肺炎などの合併症を起こしやすいと言われています。
また、妊婦さんがインフルエンザを重症化した場合には、流早産のリスクが上昇することが報告されています。また、妊娠初期のインフルエンザ感染では、胎児の心奇形や神経管異常、成人期の統合失調症との関連を報告している論文もあります。
残念ながらインフルエンザに罹るのを100%予防する方法はありません。しかし、インフルエンザワクチンを接種することでインフルエンザ感染の重症化を予防することができます。
ちなみにインフルエンザは不活化ワクチンであり、妊娠中に摂取することが可能です。また、接種時期に関しても、妊娠初期を含めて全妊娠期間で可能です。また、授乳期にワクチンを接種しても乳児への悪影響はないため、授乳中のインフルエンザワクチン接種も可能です。
ワクチン接種の効果発現には2~3週間かかります。その後、ワクチンの効果は3~4カ月間持続するため、季節性インフルエンザワクチンの接種時期は流行の始まる10~11月頃が望ましいと言われています。
インフルエンザワクチンはタイプがある程度一致しないと有効でなく、一致しても鼻粘膜での粘液免疫でウイルスを排除できるわけではないため、100%感染を防御できるわけではありません。このことから、インフルエンザワクチンを接種したからといって、インフルエンザに感染しないわけではないので、この大流行中に人ごみの中に外出することはやはり避けたほうがよさそうです。
インフルエンザワクチンの最も期待される効果は、インフルエンザ感染の重症化の予防です。
そのほかにも様々な効用が報告されています。
インフルエンザワクチンを接種することで、母体中にインフルエンザ抗体ができます。その抗体の一部が胎盤を介して胎児に移行することで、出生後に赤ちゃんがインフルエンザに罹りにくくなるだけでなく、罹ったとしても肺炎を起こすリスクが下がることが報告されています。
日本では抗インフルエンザ薬として、ザナミビル(リレンザ®:吸入薬)、オセルタミビル(タミフル®:内服薬)、ペラミビル(ラピアクタ®:点滴薬)、ラニナミビル(イナビル®:吸入薬)、パロキサビル(ゾフルーザ®:内服薬)が使用できます。
ザナミビル(リレンザ®)、オセルタミビル(タミフル®)、ペラミビル(ラピアクタ®)、ラニナミビル(イナビル®)は、ノイラミニダーゼの活性を阻害してインフルエンザウイルスが感染した細胞内から出れないようにしてウイルスの増殖を防ぎます。また、パロキサビル(ゾフルーザ®)は、Capエンドフクレアーゼを阻害してインフルエンザウイルス自体が増殖できないようにします。どちらのタイプの薬剤も発症から48時間以内に服用開始する必要があります。
妊婦に対して一般的に用いられる抗インフルエンザ薬は、ザナミビル(リレンザ®:吸入薬)、オセルタミビル(タミフル®:内服薬)であり、CDCのガイドラインでも推奨されています。また、ペラミビル(ラピアクタ®)、ラニナミビル(イナビル®)も使用することができます。
ザナミビル(リレンザ®:吸入薬)、オセルタミビル(タミフル®:内服薬)は安全性は高いのですが、長期間服用する必要があります。ペラミビル(ラピアクタ®)、ラニナミビル(イナビル®)は病院で服用すれば治療終了ですので、確実な投与という意味ではペラミビル(ラピアクタ®)、ラニナミビル(イナビル®)の方が有利かもしれません。
パロキサビル(ゾフルーザ®)は新薬ですが、有益性投与となっており投与自体は可能と思われます。しかし、最近では耐性ウイルスの報告も出てきているので、パロキサビル(ゾフルーザ®)の投与自体を検討する必要があるかもしれません。
インフルエンザ患者と濃厚接触した場合(旦那さんや子供がインフルエンザを発症した場合など)には、抗インフルエンザ薬の予防投与を行うことができます。予防的投与と治療的投与の服用の仕方が異なるものがあるので、注意が必要です。また、抗インフルエンザ薬の予防的投与は基本的に自費となるため、費用については病院にご相談ください。
授乳中の抗インフルエンザ薬については、薬剤添付文書上では”授乳を避ける”と記載してありますが、母乳移行量が微量であることから授乳自体は可能と判断されます。また、同様に抗インフルエンザ薬の予防的投与も可能と判断されます。
一般的にインフルエンザウイルスは母乳中に分泌されないため、授乳自体は可能です。しかし、インフルエンザの高熱で苦しんでいる最中に授乳をすることはとてもきついと思いますので、この時だけは家族の方にミルクを与えてもらうとか、搾乳をして哺乳瓶で授乳してもらうなど、ご家族に協力してもらっても良いかもしれませんね♪